理事長対談

理事長対談

2009年6月18日 6月例会後
小池百合子氏(衆議院議員)
栂野慶太(社団法人東京青年会議所第60代理事長)

栂野理事長

アメリカがニューディール政策だといっている中で、環境省が出したレポートは、社会が不景気だからこそ消費最優先の経済から、持続可能な経済を目指して行く。インターネットのアイディアだけで商売をすることではなく、日本の得意な物事を着実に積み上げていったり、作ったりすることに助成金を出す。今後日本が世界の中でのいろいろな大国と環境というものをルールに戦うのに、小池先生の見る日本の将来性と経済にいったいどのような効果が現れてくるかをお聞かせください。

小池氏

第一に、何でも戦略を考える時に、「相手の状況」はどうか、それ以上に「自分は何か」の分析が欠かせません。日本にとっての「不都合な真実」と「好都合な真実」をまず棚卸しせよ!と私は言っています。不都合な真実は、少子高齢化ですが、好都合な真実にすると長寿社会になります。不都合は、エネルギー資源には恵まれない日本ですが、好都合は省エネ対策として燃費のよいハイブリッドカーに代表される環境力を有していることです。不都合と好都合は裏表です。不都合を見出して、それをいかにして好都合に変えていくかが大切です。そこにいろいろなチャンスが生まれます。だからこそ、先人たちは持続可能な日本を作ってきたのです。好都合をさらに好都合にするためにはどうしたらよいか、不都合をどう好都合に変えるか。元来日本が持つ強い部分をもっと伸ばしていく戦略です。      2050年で温室効果ガスを半減し、美しい国、美しい地球を築くという安倍政権で打ち出した目標があります。地球温暖化を防止するためには、2050年にCO2の排出量を80%削減する必要があると科学的な分析もありますが、それはすなわち石油などの化石燃料を使わないという意味になります。頭の中が「石油」でタプタプした、20世紀の石油漬けの頭で考えていたら、2050年にマイナス80%など想像もできないでしょう。

私はまず日本は不都合な真実である「石油がない事実」を想定し、それがゆえに日本はさらに環境力を高めて、「石油は来ない」と覚悟を決めるしかない。そのために太陽光発電などの再生可能エネルギーを最大限活用しながら、安全運転を大前提として原子力発電を活用すべきだと思っています。唯一の被爆国・日本で安全な原子力発電が行われてきた。原子力の技術は世界で信頼感を得られる一つの大きな日本の「ウリ」だと思います。

栂野理事長

少し視点を変えて見渡してみると、ここ近年の戦争はエネルギー関係が原因で、ブッシュ前大統領の中東での対処もやっぱり石油かなという感じがします。人間のすごいところは。ここ10年20年ですばらしいエネルギー革新がおきて、エネルギーが変わっていくと世界の地図がどう変わっていくのか、お聞かせください。

小池氏

私が19歳で中東に行こうと決意した理由の一つは、エネルギー問題です。日本の脆弱なエネルギーの部分で、必ず中東専門家のニーズが出てくるはずだと考えたからです。20世紀の世界の歴史はすなわち「石油」であり、日本の過去の戦争も結局は石油が原因です。ABCD包囲網で石油が干上がり、満州や南印への進出があった。不都合な真実の究極な姿はそこにあるわけです。だからその脆弱な部分を、日本の物作り力、イノベーションで克服すべきと申し上げているのです。戦前には人造石油開発の挑戦も進められました。そのことを考えれば、平和な今、石油を使わない社会を作り出すことができたら日本はこれほどの御の字はないのではないでしょうか。石油漬けの脳の人はそういう発想がありません。ビジネス面でも、いち早く低炭素社会の実現を狙う人は勝利することでしょう。

栂野理事長

アメリカだと昔、紅茶が原因で戦争をしたとか、アジアを目指すのは胡椒を求めていたということと同じで、どんどんエネルギー効率が上がってきて、これから風とか波とか太陽光とか普通に生活の中にあるものでエネルギー源を作り出し、我々の生活のエネルギーを賄えれば戦いをすることはないのではと思います。今の戦いの理由が大きく変わっていくかと思います。

小池氏

例えばスーダンの問題も今も注目されていますね。昔はスーダンの石油など、誰も考えませんでした。でも最近石油を産出するようになって、中国を含む石油の利権争いとなっているのです。20世紀は石油の戦いの時代なのです。

栂野理事長

日本の経済、とりわけ技術力は、例えば決まった大きさの太陽光パネルからどれだけエネルギーを生み出せるか競争させたら今も今後も世界一だと思います。そういったものが、どうしても我々が生活していく中で、経済は切っても切れないし、経済活動を止められるかということが難しい中で、いかに自分たちの力で経済が循環可能にということはこれから日本が目指していくことで間違いはないのですね。

栂野理事長

もう一つ伺いたかったのは、クールビズのように国民の環境意識を変えて、これだけ楽になったように、今まで何の法整備もいらないものをなぜ我々ができなかったのかです。逆に国民の意識と行政が一体にまだなっていないのはなぜなのか。例えばプリウスの燃費が10%増しましたというよりも、アメリカの通勤風景で4人乗ると高速道路の優先レーンを走ってよいですよとか、無料のレーンがあったりですとか、そのことを徹底化して、もし乗車率が倍になったらプリウスの燃費を倍向上させるよりもよっぽど簡単なのではないかと思います。ただ残念なのは、青年会議所はそれを法制化する力はありませんし、そもそも国民の意識として自分たちにメリットはないけどせめて2人乗りで行こうとかの意識がまだまだ世界と相対的にあるにせよ、現在充分なだけその意識があるかといったらまだ不十分だと感じますが、今の日本人の環境に対するエネルギーの使い方などを一つとってもそうですが、国民の意識と今後どうあるべきか、それから国としてはどう変えていくかをどうお考えでしょうか。

小池氏

時々、日本人はロジックが飛んでしまうところがあります。例えば、エコカー減税を導入しながら、休日の高速料金を1000円に下げるのはどう考えても低炭素化社会とは矛盾します。コンセンサスの政治は、足して二で割るようなことが多い。しかし、もう少し整合性をとって、明確に環境立国で進むんだ、石油漬けからも脱するのだと、国民に覚悟と理念を伝えるメッセージが必要なのです。コンセンサスの時代から、コンビクションの時代へと移るチャンスなのに、それがない。

栂野理事長

ないというのは、国民の意識なのか、それとも政治のことなのでしょうか。

小池氏

政治が明確なメッセージを出さないと、国民の意識が高まるはずもなく、困惑するだけです。メッセージの出し方をきちんと決めて、実行すると、前の総選挙のような結果がえられる。小泉元首相のように覚悟したのだなと国民が感じ、熱狂的に小泉さんを支援したわけです。覚悟を決めなければ2050年の案も言葉遊びになってしまいます。

栂野理事長

私は前の仕事でJETROに居たのですがその時感じたのが、日本は良い技術があってもそれを擁護するだけのうまさが政府にはない。戦略的な外交と言う意味でも政府にはその部分を見てもらいたい。良い産業でも世界に売り込むだけの力がないのでそれだけの国力が今の日本にはない気がします。

小池氏

日本はそれぞれ企業単位で事業を行っていますよね。以前、ある中東の国と契約を結ぼうとしたところ「神がお望みならば支払いましょう」という言葉が契約書にあったことで、その経営者は困惑しました。実は、この言葉は中東での決まり文句で、しばしば使われます。でも、その経営者は、仕事はしても支払いがあるかどうかわからないと不安に陥りながら、はたして日本は守ってくれるのか、日本の対応は期待できるのかと、ますます不安になりました。で、その経営者はアメリカの企業を買収し、アメリカ企業として中東の相手と契約をはたした。その経営者いわく、問題が起こったら一番先に逃げるのは日本政府ではないか。とても印象に残っています。

栂野理事長

アメリカはよく大統領の来日に自動車会社のトップを連れてきたりして政治力を使って行動をすることは比較的恥ずかしがらずに思っていますね。

小池氏

そのあたりは、政治と産業の透明性を確保しながら、国家として産業界と一枚岩になってやらなければ、日本は取り残されます。世界での日本の存在が希薄になる。政治と経済を車の両輪のように進めるのが普通の国。日本はナイーブ過ぎると思います。

栂野理事長

環境というものの捉え方が、わかっていながら、小池先生のご講演を聞いて改めて思ったことは、ただ単純に環境を良くしようとする環境保護と、環境で世界のフロントランナー

になるためには、産と官が一緒になって、いろいろぶつかりながらも、経済を活性化させて、それがゆえに国の発言力を増していくというのが、過去には自動車産業にはあったのではないかと思います。メッセージを明確に出していただきたいし、本当に環境立国になったときに、また日本のステータスが世界に対する発言力として増して行くと思います。

政治として国民に環境で本気で世界一を目指しましょうという方向になれば、国民の日々薄らぐプライドを取り戻せると思いますし、もっといろいろなところに言っていただけたら良いかと思いますが、それが可能なのかお聞かせください。

小池氏

可能ですよ。可能なのにその力をフルに使わずして、他の国に出し抜かれるのは、まだ日本の覚悟と設計が足りない証拠です。実は、昨年、私が総裁選に出馬したのは、この国を低炭素社会に変えてしまおうとの目的があったからです。それを一大臣でやろうとしても、他の省庁や関係議員が反対して、なかなか実現できません。ならばトップになって、実現したほうが早いと考えたからです。総理になるのは目的ではなく、実現したい目標があるから総理になろうと思いました。目的は環境立国の実現です。石油漬けのままでは、日本のエネルギー安全保障上、問題です。それも国民の共感なしには機能しません。環境を通じて自己実現を達成できるシステムを構築したい。心技体の考えですね。


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