理事長所信(あいさつ)

社団法人東京青年会議所2011年度理事長所信

第62代理事長 奥山 卓

「この国を今一度洗濯いたし申し候」

坂本龍馬が乙女(姉)に宛てた手紙に書かれている一文です。幕末の時代、幕府の弱体化と黒船の来航による社会の混乱に日本の未来を憂い、自ら命を賭として立ち上がった青年達がいました。今日、龍馬と周りにいた青年達が人々の間で話題にのぼっているのは、現在の日本を幕末と同じ状況だと感じているからではないでしょうか。

長引く不況による経済の衰退、政治は権利や権益をめぐる党利党略に振り回され、国民は国家の主権者である自覚がなく、ふと周りを見渡せば他人を思いやる心は伝える術を失い、目の前にある悲しい出来事は、テレビドラマを見るかの様にチャンネルを変えれば忘れ去られています。そのような状況の中、現在の青年達はどうでしょうか。不安や閉塞感を抱きながらも何も行動しない人や、未来を憂い、不満を嘆くだけの人もいます。一方で、あるべき未来をしっかりと考えている人もいます。これは幕末の世もさして変わりはしないでしょう。明治維新を成し遂げた龍馬達のように、その考えを行動に起こさなければ何も変えることができないということです。

戦後の混乱が残る1949年に私たちの先輩は、この国の未来のために立ち上がりました。私たちJAYCEEは、現代を生きる青年として未来を創る責務を負っているのです。何かに頼ることや物事を評論することではなく、青臭くても畏縮することなく声を上げ、失敗を恐れずに率先して行動していきましょう。私たち一人ひとりは東京青年会議所という運動体に所属しています。会議所という名称から会議だけをする所と思われますが、青年会議所運動の本質は社会の変革を目指した運動を通じ、私たちが共に磨き合い自己修養をする団体なのです。私たち一人ひとりでは、社会に波紋を投げかけることは難しいかも知れません。しかし、東京JCメンバーの英知と勇気と情熱をもって全力で物事に当たれば出来ないことはないと考えます。私たち青年の団体は、その若さ故に行動する力があります。今、社会で何が起きているのかを察知し、そこに問題があれば機敏に行動しなければなりません。おかしいと口で言うことは誰でもできますが、私たちは評論家の団体ではありません、動かなければ何も変わらないのです。

さあ、私たちJAYCEEがこの国を今一度洗濯しようではありませんか!

若者の夢が溢れる社会を創る

世の中の活気が消え、この国の先行きが見えない混沌とした現在、私たち青年世代が、夢を持ち、未来に向けて努力をし続ける必要があります。なぜならば、学生世代を中心とする若者が、自らの可能性や未来に夢を持つことが難しい昨今、私たち大人が、若者に対して、諦めないで努力し続ける姿勢を見せられなければ、若者の将来とこの国の将来が危ぶまれるからです。私たちは、縁あってこの国に生まれた若者たちに個人の尊厳を持って自由闊達かったつに成長して欲しいと願っています。私たちの上の世代の方々と話している際、「最近の若者は」というフレーズをよく耳にします。本当に最近の若者だけに起因する問題なのでしょうか?実際のところ、私たちの学生時代とそう変わらない気もします。一体何が違うのでしょうか。最近の若者にとって、私たち世代には出来た夢に踏み出すその一歩が、この社会では大きなハードルになっていると感じます。夢や希望が持ちにくいのは、持っても仕方ないという諦めの気持ちが大きいからではないでしょうか。

いつの時代も若者は純粋であるはずです。また、彼らは情報の波に飲まれつつも、しっかりと事の善悪を知っています。だからこそ若者が夢に踏み出し易い機会を提供し、若者に自己表現の可能性を広げる運動を起こす事が私たち東京JCの責務だと考えます。若者の問題は、私たち責任世代の問題です。

私たちは、彼らの夢と情熱に挑戦する環境を構築し、社会が後押しをして支える。時に手を差し伸べ、時にはそっと背中を押し、社会の輪の中に生きている実感を与えるべきです。若い彼らが夢を持つということは、前に突き進む彼らのエンジンとなり、活力ある未来の源になります。夢は人を変え、周りを変え、社会を変え、日本を変えていきます。若者が未来について目を輝かせて語ることが出来、夢を描ける場を私たち大人の手で提供しようではありませんか。私たちが若者に行動するきっかけを与え、道を切り拓くのです。そして共に活動する中で生まれてくる若者たちの目の輝きは、きっと私たち青年世代が持つ火を一層力強いものとするはずです。私たちは、その火をもって更に周りに火を点けていきましょう。その火はやがて大きくなり、この国の未来を照らすことになるでしょう。

思いやりがあふれる東京を創る

私たちが生活の場を持つこの東京は、高度成長の時代を経て成熟期に入っています。しかしながら都市のハードウェア部分の成長に対して、ソフトウェア部分である私たちのまちに対する意識の成長は追いついているのでしょうか。東京の多くのまちでは隣に住む人の名前も知らず、顔も合わせず、挨拶もありません。一部のコミュニティでは住民間の交流は復活してきていますが、東京という都市で暮らす人たちの多くは、地域貢献どころか自らが住むまちのコミュニティへの参加すら出来ないでいます。このような地域からの断絶は公の心を失わせ、無関心、無責任な利己主義の横行やモラルの低下を招き、本来、温かくかけがえのない人と人との繋がりや思いやりすら面倒なもの、迷惑なものと考えてしまう要因となっています。そんな社会で生きる子どもたちは善悪の判断すら出来ず、そして自分自身も大切に出来なくなってしまいます。私たちは、他者への関わりが尐ないこの東京だからこそ、今一度他人を思いやることの大切さを発信し、他人を思いやる術を考え、思いやりの火を伝えていかなくてはならないのです。私たちの手でもう一度「思いやりがあふれる東京」を創りましょう。

23の輝く地域を創造する

東京JCは、様々な特色を持った23の地域をステージとして様々な運動を展開しています。まず、23区委員会の大きな役割として、これからの地域を担うメンバーの育成と地域交流の活性化があります。それぞれの地域を担う委員会は、地域の代表として産官学や諸団体との交流連携を即時にとれるネットワークの構築が必要となります。そのネットワークの中で、そして青年経済人として地域の問題に対して迅速かつ柔軟な対応をすると同時に、5年先10年先を見据えたビジョンと費用対効果の高い運動を展開することが求められているのです。

そして、私たちは23の魅力に溢れた一つの地域であるということも忘れてはなりません。23区委員会が連携することで、活力溢れる地域へと導く事が出来るのです。私たちメンバーが、それぞれの地域の中で自らが輝く存在へと成長していこうではありませんか!その成長の束こそが、魅力溢れる23の輝く地域を創造する原動力となるのです。

さあ、私たちが生きるこの東京を光り輝く元気な地域として、次世代に繋げてゆくために共に礎となって行動していきましょう!

志を同じくする仲間と共に

1949年設立当初、48名の有志が集まり、東京青年会議所(当時東京青年商工会議所)を設立しました。そして、1951年に日本青年会議所が設立され、 1987年には全国で約67,000名ものメンバー数に達しました。しかし、バブルが弾け20年経った現在、約35,000名までメンバーが減尐しています。東京JCも同じく、1989年には約1,500名までいたメンバーが、2010年度初頭には約500名にまで減尐しました。時事問題にスピーディに対処するため、またJC運動が各地域でより効果的に展開されるためにも会員拡大は急務であり、メンバー全員で取り組むべき大きな課題です。会員減尐の原因として、メンバー一人ひとりが東京JCの可能性と価値をしっかりと理解していない事も挙げられるのではないでしょうか。その時その時代の東京JCを作るのは現役メンバーです。多様な価値観を持つメンバー一人ひとりが東京JCの一員であるという自負を持ち、相集うことにより新しい価値観が生み出され、それに惹かれた人たちが新たに集うことが理想といえます。社団法人は、人の集いに対して法人格が付与されているものであり、40歳定年制を敷くJCにとって会員拡大は永遠のテーマとなります。東京JCがさらなる会員拡大を実現させるためには、全てのメンバーが東京JCの可能性や価値観を共有した上でJC運動に励み、入会候補者に対しては誇りを持って接する事が基本であり、絶対に欠かせない事であります。引き続き、私たちメンバーはJCに夢と誇りを持って、会員拡大を我が事と捉えて積極的に取り組まなければなりません。

志を同じくする仲間が増えれば私たちの運動の幅が広がると同時に、メンバー一人ひとりのつながりが確実に増えますし、何より活動が楽しくなります。同志が増えることによる広がりは、運動の力を強くさせ、社会に変革を起こす可能性も高くなるでしょうし、私たちの運動に参加する仲間を呼び込むことにつながるでしょう。このプラスの連鎖を巻き起こすためにも、メンバー一人ひとりの意識・行動が大変重要となります。

私たちのプライドにかけて、私たちが所属している東京JCを、真に社会から必要とされる団体となるためにも、共に邁進しましょう!

自ら発信する団体へ

一つの事業や活動をより大きな運動とするためには、広く社会に発信することが効果を得るうえで必要となります。価値ある素晴らしい事業は、効果的な発信によって、更に大きな効果が期待出来るはずです。

これまでの事業や活動において発信と動員に苦労をすることが多くありました。それを尐しでも改善するために、視聴率や話題性の有無によってしか事象を取り上げないマスメディアだけを頼るのではなく、私たちが「自ら発信する団体」となる必要があります。多くの事業や活動を、動画サイトやコミュニティサイト等を活用して積極的に発信していきます。インターネットを活用する発信だからこそ声なき声を集めることも出来るでしょう。このような取り組みにより集めた声を他の人に伝えることが出来れば、より大きな効果に繋がります。今こそ「自ら発信する団体」となるときなのです。良い事業であるのに一部の人しか知らない事業にしてはなりません。様々なメディアを活用し、事業をより効果的に発信することが運動のさらなる飛躍に繋がるのです。

東京JCが持つ「つながり」の活用

東京JCには様々なネットワークが存在します。しかしながら多くのメンバーがそのネットワークを認識し、活用できていないのではないでしょうか。東京JC だけでも多くのメンバーがいますが、一つの委員会の中だけで活動しているメンバーが多数いるのではないでしょうか。例会のみならず、全体事業や委員会などでの交流を積極的に行い、メンバー同士のつながりがより多く得られる機会を増やしていきます。また、日本JCや全国の各地会員会議所の仲間とも積極的に交流することができるよう取り組んでいきます。日本中の多くの仲間やその事業を知ることにより、私たちが行う運動がより進化することが出来るでしょう。そして世界に目を向ければ、私たちはJCIという組織の中で世界に友人を作ることが出来ます。情報化と経済の多様化によって世界が狭くなった現在、社会をより良くしていくためにはグローバルな運動が必ず必要になってきます。世界に広がる組織力を持ったJCIは私たちにさらなる飛翔の翼を与えてくれるでしょう。経済も環境も平和も、現代の相互に依存した社会では、東京や日本だけでは解決出来ないことが多くあります。アジアをはじめとする世界中の仲間たちとこの地球の未来を語る必要があります。日本の首都として、世界に冠たる国際都市として、この東京で私たちの担うべき役割は多岐にわたるはずです。世界にお互いを切磋琢磨する友人関係を構築し議論が出来る環境を作っていきましょう。

また、私たちには60年以上にわたり青年会議所運動をつないでいただいた3,000名以上もの先輩がいます。時によき理解者であり、時に最高の応援団でもあります。そんな先輩たちと私たち現役メンバーが交流出来るような取り組みも行います。このように東京JCには数えきれないほどのネットワークが存在します。多くのメンバーがJC運動は勿論のこと、培われた友情を自身のかけがえのない財産に出来るように取り組む必要があります。

一灯が万灯となる

困難な時代を乗り越えるのは、その時代を生きる青年の責務であると述べました。しかし、目の前に黒船がある訳ではなく、焼け野原がある訳でもない今のこの国の困難は、まるで真綿で首を絞められているような感覚ではないでしょうか。多くの国民は自分が住んでいる地域や社会に無関心でいることができ、政治は本質的な問題を先送りすることが横行し、人の心は他人の痛みが少しわからなくなっています。

困難を乗り越えるのに近道がないこの時代だからこそ、私たちがやらなくて誰がやるのか。

尻ごみをしてはなりません。喜んでその仕事を引き受けようではありませんか。

私は、皆さんに高邁な献身を求めることもあるでしょう。東京JCには、それに見合うだけの価値があります。愛すべき地域のために、誇り高き日本のために、そして夢にあふれた未来のために、自ら何ができるかを問うていこうではありませんか。一つの活動は小さな灯でしかないかもしれません。その灯を私たち皆で灯していきましょう。私たち一人ひとり自らが、灯となることが出来れば、それは希望に満ちた未来を明るく照らしてくれるでしょう。

それが私たち東京JCの使命なのです。

一つの灯火を掲げて一隅を照らす。
そうした誠心誠意の歩みを続けると、いつか必ず共鳴する人が現れてくる。
一灯は二灯となり三灯となり、
いつしか万灯となって国をほのかに照らすようになる
だからまず自分から始めなければいけない。
そのためには自分自身が明りにならなければいけない。
それは手燭を持つことではない。
そんなものは吹き消されたらそれっきり真っ暗になってしまう。
そうではなく、自分自身が発光体になるのだ。

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